■「複雑すぎて、理解し切れず」
京扇子製造販売の老舗、大西京扇堂(京都市中京区)は、クレジットカードや一部のスマートフォン決済を取り扱っていたが、今夏からさらに多くのスマホ決済に対応できる端末を導入した。10月からのポイント還元制度に参加するためだ。
「複雑すぎて店側も客側も仕組みが理解し切れない。高齢の客も多いため、どこまで浸透するのやら」。周到に準備を整えたものの、増税が近づくにつれて大西庄兵衛代表取締役の不安は膨らむ。実際に、ポイント還元制度はその複雑さもあってか、中小事業者での導入は本来の制度対象店舗の25%程度に過ぎない。
10月からクレジットカードや電子マネーなどのキャッシュレス決済で買い物をすると、ポイント還元制度に申請して登録された中小店で5%、コンビニなどのフランチャイズ(FC)の登録店では2%のポイントが付与される。利用の際にはポイント還元制度の対象店舗であるか、ロゴマークなどでの事前確認が重要で、それ以外の店舗や百貨店、量販店など大手小売店は還元されない。酒類や外食を除く飲食料品は軽減税率8%が適用されるため、実質的な税率は3、5、6、8、10%の5段階が当面存在することになる。
例えばポイント還元制度に登録された個人経営のベーカリーでパンを持ち帰り購入すると、消費税は8%。キャッシュレスで精算すれば5%分のポイントが還元され、実質負担は3%に下がる仕組みだ。
■大手スーパーや百貨店は危機感
キャッシュレス決済事業者によって還元策は異なる。
JCBや三井住友カードなど大手クレジットカード5社はポイント還元でなく即時値引きで対応。JR西日本の「ICOCA(イコカ)」など交通系電子マネーは後日利用できるポイントで還元される。スマホ決済の「PayPay(ペイペイ)」「楽天ペイ」などは、独自のポイント交付が多い。
一方、ポイント還元制度の「蚊帳の外」となる大手スーパーや百貨店は危機感を隠さない。会員カードにポイントを上乗せしたり、セールを実施したりと独自策を講じ、顧客の流出阻止に躍起だ。
ただ、実質的な値引き合戦になれば価格競争が過熱し、事業者のさらなる収益悪化も懸念される。キャッシュレス誘導策でもあるポイント還元制度が、地域の企業や店舗にどのように影響するか注目される。
ラベル:消費増税